さあ、行きなさい。わたしはあなたをエジプトに遣わそう。(使徒の働き7:34)
母親から出自について聞かされていたであろうモーセは、40歳になった頃、同胞のイスラエル人を顧みる心を起こす。そんな時、彼はイスラエル人を虐げているエジプト人を殺してしまい、逃亡生活を送ることになる。彼は、自分の手によって神が兄弟たちに救いを与えようとしておられるという自覚があったが、その志は打ち砕かれ、遠くのミデヤンの地に身を寄せ、家庭を持つ。ひっそりと暮らしていたモーセに神が語りかけたのは、実にその40年後であった。燃える柴の中から神は、「わたしは、確かにエジプトにいるわたしの民の苦難を見、そのうめき声を聞いたので、彼らを救い出すために下って来た。さあ、行きなさい。わたしはあなたをエジプトに遣わそう。」(使徒の働き7:34)。神は、苦しめる者の叫びの声をそのままにしておかないが、、モーセがイスラエルを救う指導者として立つためには、王女の子として最高の教育をもって育てられ、知識と技量を体得しただけでは不十分であった。神は彼に、自らの起こした事件によって40年間逃亡生活をするという、徹底的に打ち砕かれるという期間を与えた。その後、神はモーセを召し出したのだ。
「神へのいけにえは、砕かれた霊、砕かれた、悔いた心」(詩篇51:17)。神は、ご自身の前に謙遜な者を用いる。聖い神からの語りかけがある時、ただ神の前に畏れかしこみ、ともにいてくださる神に信頼しつつその声に聞き従いたい。